
| 11月 添 削 と 寸 評 | ||
| 今月は若草句会が発足してから2年近くになりますが、いい句が大変 | ||
| 沢山あり、正直いって驚いています。皆さんの精進が確実に実ってい | ||
| ます。今後も精出してください。 | ||
| 11月は暦の上では冬ですが、気候としては秋本番です。夜長に | ||
| 句作りで時間を過ごすのもいいものです。 | ||
| 相変らず私なりの添削と寸評をします。ご了承ください。 | ||
| 番号 | 寸 評 & 添 削 | 俳 号 |
| 1 | 天高し神鈴の鳴り法螺の鳴り | 彰 子 |
| 私の句です。出羽三山へ御参りしたときの句です。青空に法螺が | ||
| 鳴り響いていました。 | ||
| 2 | 二百年経たる茶釜や文化の日 | いなご |
| いい句です。由緒ある名器なのでしょう。その茶釜を使っての | ||
| 茶会、いい茶会だったことでしょう。 | ||
| 3 | 穂薄や露天風呂より阿蘇五岳 | コスモス |
| いい句です。露天風呂よりの阿蘇五岳の眺望がすばらしい。いい気分 | ||
| になる。 | ||
| 4 | 鳥除けの工夫凝らして柿のれん | 浩 風 |
| いい句です。吊し柿がおいしそう。鳥除けのために凝った工夫をしている | ||
| のでしょう。どんな細工をしているのでしょうか。 | ||
| 広辞苑では「柿のれん」は「柿色にそめた暖簾。また「すだれ」とは | ||
| 細い蘆または細く割った竹を糸で編み列ねて垂らすもの。とあります。 | ||
| 大歳時記の季語には「柿すだれ」があります。 | ||
| <添削> 鳥除けの工夫凝らして柿すだれ | ||
| 5 | 炉を囲み話の尽きぬ戦前派 | さつき |
| いい句です。戦争の話でしょうか。尽きない話に夜も更ける。 | ||
| 今は平和でありがたい。 | ||
| 6 | 休耕田知るや知らずや泡立草 | まこと |
| いい句です。泡立草ははびこるので嫌われますが泡立草に罪はあり | ||
| ません。泡立草は咲くときれいですよね。 | ||
| 7 | 小夜時雨つれづれのまま筆をとる | 泉 |
| いい句です。どなたに送る手紙でしょうか、それとも習字の稽古でしょう | ||
| か。満ちたりたひととき。 | ||
| 8 | 黄落に埋もれてありし比翼塚 | コスモス |
| いい句です。いい光景ですね。「黄落」と「比翼塚」の取り合せがよい。 | ||
| 「比翼塚」とは相思の男女を、いっしょに葬った塚のことです。 | ||
| 9 | お茶席の子規の絶筆萩一枝 | 越 |
| いい句です。子規は絵も上手でした。子規を偲んでのお茶席。いい | ||
| 風情ですね。 | ||
| 10 | 初冬の日のやはらかし石地蔵 | 泉 |
| 簡潔で素直ないい句です。石地蔵も心地好い穏やかな一日。 | ||
| 11 | 気がかりはその後の行方大かぼちゃ | 楓 花 |
| いい句です。大かぼちゃは大きさを競うものとして作られます。競技会 | ||
| のあとは無用の長物で処分に困ることでしょう。その後の行方が気に | ||
| なりますね。 | ||
| 12 | 木犀の馥郁とした道続く | 千 柳 |
| いい句です。 | ||
| <添削> 木犀の馥郁とした露地の奥 | ||
| 「道続く」を「露地の奥」と断定してみました。 | ||
| 13 | 秋の川鷺の子の足透き通る? | 楓 花 |
| いい句です。澄み切っている秋の川に鷺の子の足が美しく透きとうって | ||
| 見え、しばし見詰めるのである。季語を下にもってきてみました。 | ||
| <添削> 鷺の子の足透きとほる秋の川 | ||
| 14 | 戸無し門くぐりぬ桜紅葉かな | 越 |
| いい句です。咲いた桜はもちろん美しいが桜紅葉も美しいものです。 | ||
| 15 | 何事もなくて二人の卵酒 | 彰 子 |
| 私の句です。私は傘寿、家内は喜寿1年まえ。これからも仲良く | ||
| 元気で平穏に暮らしていこう。 | ||
| 16 | 渋柿の色鮮やかや収穫す | 浩 風 |
| <添削> 渋柿の色鮮やかや白い雲 | ||
| 「収穫す」は付き過ぎになるのでこのようにしてみました。 | ||
| 収穫期を迎えた柿の色は鮮やかで鳥も寄ってくる。 | ||
| 17 | 一本のさくら紅葉や無人駅 | 媛 香 |
| いい句です。一本のさくら紅葉が迎えてくれる無人駅。いつまでも咲き | ||
| 続けてほしいと願う。 | ||
| 18 | 師走来る喪中の葉書に友しのぶ | 菜の花 |
| <添削> 師走来る喪中の葉書つぎつぎと | ||
| 中八になっています。また「友しのぶ」は付くのでこのように詠んでみま | ||
| した。 | ||
| 19 | 青き星月より昇る秋の宵 | そらまめ |
| いい句です。秋の美しい光景。しばし見とれる。 | ||
| 20 | 黒トマト色見て食欲今ひとつ | 竹 豪 |
| <添削> 黒トマト熟るる石鎚明らかに | ||
| 詩情に乏しいと思います。私は「黒トマト」を知りません。トマトとしては異色の | ||
| 色だが味はよいのではないでしょうか。トマトの向こうに石鎚がくっきりと見える。 | ||
| 21 | 故郷の祠にそそぐ十三夜 | さつき |
| いい句です。故郷の小さな祠にそそぐ十三夜。子供のころ神社で遊ん | ||
| だことが懐かしく思い出される。 | ||
| 22 | 石手寺や朝のしじまに鵙の声 | 哲 朗 |
| いい句です。毎朝石手寺へお参りしているが今朝は鵙がしきりに啼いている。 | ||
| 23 | 山ほどの渋柿妻と皮を剥く | 浩 風 |
| いい句です。作っている柿か、貰った柿か、皮を剥くのは大変です。 | ||
| しかし干柿ができるのが楽しみです。 | ||
| 24 | 四万十の沈下橋ゆく遠千鳥 | 泉 |
| いい句です。四万十の沈下橋は有名。沈下橋から千鳥を眺めるのど | ||
| かな光景。 | ||
| 25 | 名を付けてそのまま残す案山子かな | まこと |
| いい句です。なんという名前でしょうか。田園風景のひとこま。 | ||
| 26 | ペダル踏む眼下の海の秋日和 | 哲 朗 |
| いい句です。「海の秋日和」はどうかと思って季語を替えてみました。 | ||
| <添削> ペダル踏む眼下の海の秋夕焼 | ||
| 27 | 崖に一戸離れて一戸冬に入る | 彰 子 |
| 私の句です。妻の実家は三崎半島の崖の上にあります。蜜柑の取 | ||
| り入れが終ると冬に入ります。 | ||
| 28 | 案山子立つ僕のお下がり似合ってる | 竹 豪 |
| いい句です。微笑ましい楽しい句ですね。 | ||
| 29 | 寝転びて冬の日差しに目を閉じる | 千 柳 |
| いい句です。至福のひととき。 | ||
| 30 | 電車通過大揺れ小揺れの瓢棚 | コスモス |
| <添削>電車行く大きく揺るる青瓢箪 | ||
| 大歳時記には「瓢棚」という季語はありません。中八です。このように | ||
| 詠んでみました。 | ||
| 31 | 柚もらう両手に包み匂ひ嗅ぐ | 竹 豪 |
| <添削> 青柚を両手に享けて嗅ぎにけり | ||
| 広辞苑では「嗅ぐ」とは「鼻でにおいを感ずる」とあります。 | ||
| 「もらう」と「匂ひ」を省略しました。 | ||
| 32 | 音もなくもみじ散る日々古き寺 | 峰 生 |
| <添削> 音もなくもみじ散りゐる古刹かな | ||
| 調子が良くないのでこのように詠んでみました。 | ||
| 33 | 哲学の小径に秋の水走る | 越 |
| いい句です。哲学の径には琵琶湖疏水が流れています。紅葉を映して | ||
| 美しい。 | ||
| 34 | おざわが党首辞任や帰り花 | そらまめ |
| <添削> 政界の大騒動や帰り花 | ||
| 世相の俳句は作り難いものです。うまく添削できません。悪しからず。 | ||
| 35 | 時雨きて孫と手を取り小走りに | 菜の花 |
| <添削> しぐるるや孫と駆け出す寺の道 | ||
| 説明的なのでこのように詠んでみました。 | ||
| 36 | 父の忌に来しかた語る夜長かな | まこと |
| いい句です。尊敬する父の背中をみて生きてきた。父の話になると尽き | ||
| ない。 | ||
| 37 | 水引の白き咲きをり伊予の奥 | 菜の花 |
| <添削> 水引の咲きをり伊予の奥の奥 | ||
| 「白き」を省略しました。 | ||
| 38 | 秋の蝶風の動きに逆らえず | 哲 朗 |
| いい句です。秋の蝶はよわよわしくて哀れを感じる。頑張って。 | ||
| 39 | 寒波来る天気予報に衣類出す | 石の花 |
| <添削> 寒波来る衣類取り出す桐箪笥 | ||
| 説明的なのでこのように詠んでみました。 | ||
| 40 | 檀の実ミニ盆栽や展示品 | 媛 香 |
| <添削> 逆光のミニ盆栽の檀の実 | ||
| 調子がよくないのでこのように詠んでみました。 | ||
| 41 | 友が逝くレクイエム聞く野菊咲く | そらまめ |
| <添削> 友逝くやレクイエム聞く野紺菊 | ||
| カトリック教会でのミサ曲が悲しくながれる。調子がよくないのでこの | ||
| ように詠んでみました。 | ||
| 42 | リハビリに杖を頼りの冬の道 | 石の花 |
| いい句です。リハビリに頑張って早く元気になってください。 | ||
| 43 | 自転車の籠に一枚初紅葉?? | 楓 花 |
| いい句です。自転車の籠にひらひらと初紅葉?。ペタルを踏むのも軽? | ||
| やか。 | ||
| 44 | とろ火燃ゆ厨の隅でおでん煮る | 石の花 |
| <添削> 一人居の厨の隅でおでん煮る | ||
| 説明的なので「とろ火燃ゆ」を替えてこのように詠んでみました。 | ||
| 45 | 秋惜しむ喜寿坂越えた妻ともに | 峰 生 |
| いい句です。妻と苦楽を共にしてきた。いつまでも元気で仲良く。 | ||
| 46 | 寒風山トンネル抜けて初紅葉 | さつき |
| いい句です。長い長いトンネルを抜けると眼前の紅葉が目にしみる。 | ||
| 47 | 十三夜そっと寄せ合う肩と肩 | 千 柳 |
| <添削> 肩と肩そっと寄せ合ふ十三夜 | ||
| 調子がよくないのでこのように詠んでみました。 | ||
| 48 | 山粧うまっただ中を歩きけり | いなご |
| いい句です。紅葉に堪能したことでしょう。 | ||
| <添削> 山粧ふまっただ中を歩きけり | ||
| 49 | 遙かなる蒜山三座山粧ふ | 媛 香 |
| いい句です。山粧ふ蒜山三座が目に見えるようです。 | ||
| 50 | 付いて来る鹿に手のひら見せにけり | いなご |
| いい句です。実感を素直に詠んでいます。 | ||
| 51 | 石鎚に天日の朝いわし雲 | 峰 生 |
| <添削> 石鎚に天日上るいわし雲 | ||
| 「天日」とは太陽のこと。「天日の朝」が気になります。 | ||