1 あなたはもう忘れたかしら 赤い手拭いマフラーにして 二人で行った横丁の風呂屋 一緒に出ようねって言ったのに いつも私が待たされた 洗い髪が芯まで冷えて 小さな石鹸カタカタ鳴った あなたは私の体を抱いて 冷たいねって言ったのよ 若かったあの頃 何も恐くなかった ただあなたのやさしさが 恐かった
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2 あなたはもう捨てたのかしら 二十四色のクレパス買って あなたが描いた私の似顔絵 うまく描いてねって言ったのに いつもちっとも似てないの 窓の下には神田川 三畳一間の小さな下宿 あなたは私の指先見つめ 悲しいかいって訊いたのよ 若かったあの頃 何も恐くなかった ただあなたのやさしさが 恐かった
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