平成19年10月1日〜平成19年10月20日 投句分
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互 選 句
第 34 回 披 講
    10 月 分 添 削 と 寸 評
 厳しかった残暑も10月になるとさすがに涼しくなってきました。
 スポ−ツの秋、芸術の秋と言いますが各種行事が盛んに行われ
ています。秋のさわやかな空気にふれて生気を養い作句に励んで
ください。今月も佳句がたくさんありました。
 相変らず私流の添削と寸評をします。ご了承ください。
 
番号       添 削 と 寸 評
1 十六夜や過ぎし十五の片思い さつき
いい句です。
中学生のときの初恋の切なさ、今になると懐かしく思い出されます。
 
2 おだてられへぼに負けるか草相撲 峰 生
いい句です。おだてられやすい性格。それにしても負けて悔しい。
 
3 片方は電話のはしら稲木かな まこと
句意がよく分かりません。悪しからず。
 
4 青空に咲きこぼれおり金木犀 いなご
いい句です。金木犀の素晴らしい香りに心が和みます。
<添削> 青空に咲きこぼれゐる金木犀
 
5 神無月友を忍びて句集読む さつき
いい句です。遺句集でしょうか。夜長に友を偲びながら句集を
読む。
 
6 遊覧船佐渡の荒磯秋の濤(なみ) 石の花
<添削> 遊覧船ゆきかふ佐渡の秋日和
「船」「磯」「濤」同じようなものが並びます。省略しましょう。
 
7 右ひだり迷ひて止めぬ赤い羽根 楓 花
いい句です。「赤い花」のシ−ズンになりました。人生、些細なことでも
迷うことがありますよね。
 
8 満月を見上げる佐渡の露天風呂 さつき
いい句です。満月を見上げる佐渡ヶ島での露天風呂、さぞいい気分だった
ことでしょう。幸せですね。
 
9 群衆のどよめき起きる鉢合わせ ゆづき
<添削> 喚声の上がる神輿の鉢合わせ
季語がありません。
 
10 栗飯を炊き終へて笑む母白寿 峰 生
いい句です。白寿で台所に立つとは素晴らしい。満足気なお母さん
の顔が見えてきます。いつまでもお元気で。
 
11 眺むれば松山城の天高し 菜の花
<添削> 天高し松山城のはるかにて
調子がよくありません。このように詠んでみました。
 
12 日出でてゆるり痩せ行く今朝の露  越
<添削> 日の昇りゆるり痩せ行く露の玉
「日の出」とは朝日が昇りでることで、「日出でて」とは言わ
ないのでは。「今朝」を省略しました。
 
13 去りがたし花野の真中友と行く  泉 
<添削> 落日の花野の中を友と行く
俳句では気持はなるべく押えたいので「去りがたし」は省略しました。
添削句でも去りがたい気持ちは詠みとれと思います。
 
14 月出でて佐渡のいで湯に雲けむる 石の花
句意がよく分かりません。悪しからず。
 
15 古簾目隠しにとて外さざる コスモス
「目隠しにとて外さざる」の意がよく分かりません。
<添削> 伊予簾はずす遠くに神の山
 
16 金塊にふれて重たき秋深む 浩 風
<添削> 金塊にふるる秋日の射してをり
「触れる」とは「ちょっとさわる」ことです。「ふれて重たき」
はどんなものでしょうか。
 
17 秋祭り足の痛みと肩の凝り 千 柳
<添削> 秋祭終ふ晩酌の老夫婦
情緒に欠けるように思います。
 
18 秋晴や畦道を行く縄電車 いなご
いい句です。大人は農作業に大忙し。子供たちは縄電車でお遊び。
田園風景を上手く詠まれています。
 
19 昆布乾す襟裳岬や秋の暮れ そらまめ
「昆布乾す」は夏の季語で季重ねになります。
<添削> 昆布乾す襟裳岬のお昼どき
 
20 秋風や何をやるにも良い季節 竹 豪
<添削> 湯の町をとうり過ぎゆく秋の風
具象性に欠けます。
 
21 月の背やかぐや見守るおきなあり そらまめ
<添削> 名月やかぐや媛守る翁あり
「かぐや姫」でなく「かぐや」でよいのかどうか。「竹取物語」
 
22 静かなり渓流青く秋気澄む 菜の花
<添削> 秋澄むや渓流に耳澄ましゐる
調子が今ひとつなのでこのように詠んでみました。
 
23 静けさや銀杏落ちる宝厳寺 哲 朗
いい句です。宝厳寺の静かなひととき。風情があります。
 
24 相寄りて音たて落ちる芋の露 コスモス
平明に表現されていい句です。。細やかな観察、そのとうりですね。
 
25 爽やかや浜辺に犬と戯れて 哲 朗
いい句です。浜辺で愛犬と戯れている心安らぐひととき。
 
26 おしまいは線香花火闇深し 楓 花
<添削> おしまいは手花火闇の深まりて
調子が今ひとつなのでこのように詠んでみました。
 
27 名月を露天風呂にて仰ぎけり 浩 風
<添削> 名月を露天の風呂に映しけり
句になっていますが、露天風呂の句は平凡になりがちです。
 
28 田の隅の廃車置場やそぞろ寒 いなご
いい句です。休耕田を廃車置場にしている。ガソリンが高騰するせいか、
廃車が多くなっている。これからは日に日に寒さが増してくる。
 
29 きゃびらか神輿出揃う秋の空 ゆずき
<添削> 新旧の神輿の揃ふ出で湯町
 「きゃびらか」で分かるのでしょうか。「神輿」は夏の季語。
 
30 青蜜柑香りを愛す父なりき 楓 花
いい句です。丹精込めて作った蜜柑。蜜柑を慈しんでいる様子が
伝わってきます。
<添削> 青みかん香りを愛でる男親
 
31 城址のさくら古木の忘れ花 媛 香
<添削> 返り咲くさくら古木や城の址
やや説明的なのでこのように詠んでみました。
 
32 来年も来ると旋回去(い)ぬ燕 まこと
いい句です。名残をおしんでいる情景がよく分かります。来年
また会いましょう。
 
33 秋晴れや子供神輿の鈴が鳴る 千 柳
<添削> 新しき子供神輿の鈴の鳴る
「神輿」は夏の季語。「秋晴れ」を省略しました。
 
34 飛行雲×を描きたる刈田かな そらまめ
句意がよく分かりません。悪しからず。
 
35 曼珠沙華燃え剣豪の生誕地 彰 子
私の句です。宮本武蔵の生誕地に曼珠沙華が燃えるように咲いて
いました。
 
36 一山を包む静寂星月夜  越
いい句です。「一山」とは一つの山、または一つの大寺を言います。
静けさの中での星月夜が美しい。
 
37 月けむり露天の風呂や暗からず 石の花
平凡で情緒がありません。考えて見て下さい。
 
38 天高しリバーサイドに走る夢  泉 
句意がよく分かりません。悪しからず。
 
39 背に夕日道連れとなり秋遍路 哲 朗
いい句です。夕日を背に浴びながら遍路は急いでいる。
 
40 水煙に待宵の月懸かりけり  越
いい句です。「水煙」とは塔の九輪の上部にある火焔形の装飾。
水煙に月がかかっているという情緒があっていいですね。
 
41 ちちろ鳴く三鬼の生家跡に句碑 媛 香
いい句です。「三鬼」は岡山県出身の俳人で新興俳句の旗手といわれ
ています。「三鬼」を慕っているように蟋蟀が啼く。
 
42 秋祭り粋でいなせなかき夫達 ゆづき
<添削> 秋祭粋なかき夫の小休止
「粋」と「いなせ」は同義語だと思います。
 
43 子の笑顔神輿の群れの中におり 千 柳
いい句です。子供御輿でしょうか。御輿に興じている子供の笑顔が
かわいらしい。
44 露草の露ひかりゐる古戦場 彰 子
私の句です。東北の平泉で源義経に想いをはせながら詠みました。
45 外国に暮らす子思い秋刀魚焼く まこと
いい句です。外国へいった子供が気になる母ごころ。季語がいい
ですね。
<添削> 秋刀魚焼く異国に暮らす子を想ひ。
 
46 湧き水を掬ひ飲み干す初紅葉 媛 香
いい句です。美しい光景。涌き水がおいしかったことでしょう。
 
47 豪農の館広大稲の秋 浩 風
<添削> 豪農の並ぶ土蔵や稲の秋
「豪農の館広大」は抽象的なので、焦点をしぼってこのように詠んでみました。
 
48 衣更えどうしようかとこの暑さ 竹 豪
<添削> 七十の妻を見直す衣更
「衣更」「暑さ」は夏の季語です。具体的に物に託して詠みま
しょう。
 
49 関所今鉄道往来曼珠沙華 コスモス
<添削> 曼珠沙華列車行き交う関所跡
「鉄道」とは列車を運転する施設のことで「鉄道往来」はどうかと思い
このように詠んでみました。
50 混浴に勇んで来たら足湯かな 竹 豪
<添削> 混浴のとばりに消ゆる十三夜
季語がありません。また情緒に欠けます。考えてみてください。
51 白鷺の舞ひて道後に湯の湧けり 峰 生
<添削> 白鷺の憩ふ出で湯の町はずれ
調子がよくないのでこのように詠んでみました。
52 百舌鳥啼くや平家屋敷の自在鉤 彰 子
私の句です。奥祖谷の平家屋敷での一句です。
53 山つつむ風の爽やか詩(うた)詠まむ  泉 
<添削> 詩(うた)詠まむ一山の風爽やかに
調子がよくないのでこのように詠んでみました。
54 草紅葉し石鎚山の風の音 菜の花
<添削> 風の日の石鎚山の紅葉かな
<添削> 石鎚の風吹きおろす渓紅葉
草紅葉と石鎚山の取合せはあわないように思います。