平成19年 1月1日〜平成19年 1月20日 投句分
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互 選 句
第 25 回 披 講
    1月分 添  削  と  寸  評
  
 若草句会は三年目を迎えました。今年も皆さんと一緒に楽しく一歩         
づつ前進していきたいと思っていますのでよろしくお願いします。
 今年も私なりの添削と寸評をします。勉強不足のためうまくできま
せんが、ご了承ください。
 季語は俳句の中でもっとも大事なものです。「季語で勝負」と言われ
るぐらいです。季語は必ず歳時記でその意味よく理解してください。
それから原則として季重ねは避けてください。
  
番号     添  削  と  寸  評 俳 号
1 夫の干す布団に深く陽の匂ひ さつき
<添削> ふんわりと陽の匂ひゐる干布団
あれこれ言わずにこのように詠んでみました。
2 庭先に仲間を見つけた木瓜(ぼけ)一輪 そらまめ
句意がよく分かりません。悪しからず。中八になっています。
3 初句会今年こそはと誓ふ我  泉 
いい句です。初句会でみんなに宣言する。心意気良し。頑張りましょう。
4 甲冑を纏い太刀振る初泳ぎ さつき
勇壮でいい句です。今年も大いに頑張りましょう。
5 遠山に茜さしゐる冬帽子 彰 子
私の句です。茜さす遠山を眺めながら来し方を思う。
6 晩学の俳句楽しむ去年今年 いなご
 いい句です。大いに俳句を楽しんでください。
7 空っ風落ち葉走らせ何処までも ゆづき
<添削> 何処までも葉っぱ走らす空っ風
 「空っ風」「落ち葉」は冬の季語で季重ねになります。
また、空っ風|落ち葉走らせ|何処までも|と三段切れになり調子が
悪くなります。
8 正月や鶴舞い降りし伊予の里  泉 
<添削> ゆるゆると鶴舞ひ降りし伊予の里
 「鶴」は冬の季語で季重ねになります。また「正月」「鶴」は付き
過ぎです。鍋鶴でしたか、珍しく伊予に飛来してきました。来年
もやって来るといいですね。
9 富士明けて羽衣舞ふと初謡ひ 峰 生
 いい句です。初謡で朗々と謡う。元気でいる幸せに感謝するとともに
今年も頑張ろうと誓うのである。
10 瀬戸の峰鳥雲に入る風車かな 石の花
<添削> 鳥雲に入るや風車の十五連
 かな止めの場合は途中で切らないで始めから終わりまで一気に
詠みます。「鳥雲に入る」は春の季語です。
11 稜線の待ちに待ちたる初日かな 浩 風
<添削> 石鎚の日の出を拝すお元日
 気持ちが強すぎます。俳句の場合は気持ちを押さえて表現しましょう。
添削句でも原句の気持ちは十分伝わると思います。
12 幸せの鐘鳴り止まぬ初詣 哲 朗
 いい句です。「幸せの鐘」はしまなみ海道沿いにある鐘でしょうか。
鐘を撞くために大勢の人が並んで待っている。今年1年の幸せを
込めて思いっきり撞く。
13 風化せる句碑の字なぞりて凍て返る コスモス
<添削> 風化せる句碑の字なぞる春隣
 中八になっています。「風化」と「凍て返る」は淋しいので季語を替えて
みましたがいかがでしょうか。
14 九つの児の読む歌留多たどたどし 楓 花
<添削> 少年の朗々と読む歌留多会
 常套句になっていておもしろくないと思います。このように詠んで
みました。
15 下灘に水仙咲いたと友の便 竹 豪
<添削> 水仙が咲いたと弾む妻の声
 中八になっています。また地名は有名な地名以外は使わない方よい。
16 大凧や地上で操り宙に浮く 媛 香
<添削> 大凧の大歓声に舞い上がる
 情景が今ひとつはっきりしません。このように詠んでみました。
中八になっています。
17 戌走り亥を追いかけて除夜の鐘 ゆづき
 景がよく分かりません。悪しからず。
18 乱立の風車をまわし風光る 石の花
<添削> 一連の風車まいゐる四温かな
 「風車」「風光る」は付き過ぎ。このように詠んでみました。
19 初詣おみくじ引いてはしゃぐ声 菜の花
<添削> おみくじを引きてはしゃぐや初詣
 調子がよくないので、上五を下五にもってきました。
20 子ら三人かわるがわるの破魔矢かな まこと
 いい句です。三人に一つの破魔矢。仲良くかわるがわるに持って帰る。
円満な家族の光景。
21 艀ゆく港にかもめ瀬戸の春 石の花
<添削> 上げ潮の艀留まりの夜寒かな
 あれこれ言い過ぎています。焦点をしぼり簡略化しましょう。
22 蛇口から若水迎え神棚へ 千 柳
<添削> 若水を汲む神鈴の鳴り響き
 「若水」とは元日の朝、初めに汲む水をいい、神聖な力を持つとして
男の役目とされています。したがって蛇口からだと実感がでません。
また「蛇口」「若水」は付き過ぎです。
23 訪れし大洲盆地に冬の霧  泉 
<添削> 母を訪ふ大洲盆地の冬の霧
 「訪れし」では説明的になるのでこのように詠んでみました。
24 無言館届かぬ願い冬木立 媛 香
 句意がよく分かりません。悪しからず。
25 一つある幸せ抱き今朝の春 楓 花
<添削> 一つある幸せいだき筆初
 具象にかけます。俳句は物に託して詠むものです。
季語を替えてみました。
26 母の忌や一年の微笑(えみ)返り花 媛 香
 句意が今一つ分かりません。悪しからず。「母の忌」「返り花」は
付き過ぎ。
27 冬ざるる砂丘や吾と妻の影 彰 子
 私の句です。夕日が沈みゆく鳥取砂丘での句です。影が長く
伸びていく、ちょとした感傷。
28 初雀鳩と睦みて餌を食む コスモス
 いい句です。元日の微笑ましい光景。
29 元気かと達筆で来る賀状かな 浩 風
<添削> 元気かと太字の母の年賀状
 母は相変わらず元気そう。いつまでも元気でいてほしい。
30 書初めや融通無碍(むげ)の筆下ろす さつき
 句意がよく分かりません。悪しからず。
31 電飾の役を終えたる冬木かな コスモス
 いい句です。今年も電飾の大役を果たし多くの人びとに喜ばれた。
これからは大冬木となってしずかにこの冬を乗り切ろう。
32 茜さす庭に来ており初雀 哲 朗
<添削> 茜さす庭に三羽の初雀
 中七を替えてみました。この方がより具象性がでると思います。
33 汗みどろ切磋琢磨の寒稽古 峰 生
<添削> 少年の汗みどろなる寒稽古
 「汗みどろ」「切磋琢磨」「寒稽古」は言い過ぎです。「切磋琢磨」を省略
しました。「汗」は夏の季語ですが、「寒稽古」が強いので許されます。
34 花鰹雑煮の上でイナバウワ 千 柳
 いい句です。花鰹がイナバウワとは面白いですね。現代的俳句です。
35 蝋梅の香がふとうれし庭を掃く 峰 生
<添削> 蝋梅のかをりや土塀崩れゐて
 俳句では「うれし」と思いを直接言わないで読む人にまかせるのです。
36 鬼瓦どっかと座るお元日 彰 子
 私の句です。鬼瓦も清々しい気分で正月を迎える。
37 冬凪の水面に揺れるマストかな そらまめ
<添削> 冬凪にマストゆうらりゆらりかな
 「凪」に「揺れる」はどうかと思いましてこのように詠んでみました。
38 寒空に星を見つめて句をひねる 菜の花
 素直ないい句です。熱心ですね。いい句ができましたか。風邪をひかない
ように気をつけてください。
39 干し魚の一つ一つに空っ風 まこと
 「干し魚」「空っ風」は付き過ぎかなと思いますが、いい句です。
細やかな気遣いが伝わってきます。
40 初稽古帯締めぎゅっと結びけり いなご
<添削> 黒帯をしっかと結ぶ初稽古
 柔道の帯は「帯締め」とは言わないのではないでしょうか。
 上五を下五にもってきました。今年も頑張りましょう。
41 爺ちゃんが見直されたる独楽廻し  楓 花
 いい句です。爺ちゃんの得意満面の顔が見えるようです。
42 数聞きて支度始める雑煮かな いなご
 いい句です。みんなに食べる餅の数を聞いてから雑煮をつくる
と言う、どこの家庭でも見かける情景。
43 夕焼けに慌てたカメラ間に合わず 竹 豪
<添削> シャッターをしきりに切るや寒夕焼
 詩情に欠けると思います。「夕焼」は夏の季語なので替えてみました。
44 年の瀬にホッカイロ貼って墓掃除 菜の花
<添削> 年の瀬にホッカイロ貼って墓掃除
 中八です。「年の瀬」「かいろ」は冬の季語「墓掃除」は秋の季語です。
考えてみてください。
45 どんどの火願ひの紙を舞ひ上ぐる 浩 風
<添削> 願ひ文舞ひ上がゐるどんどの火
 原句ですとやや説明的になるので上五を下五にもってきました。
勢いよく燃え上がるどんどが見えてくるようです。
46 御降りやわがふる里を包みけり まこと
<添削> 御降りやむらさき深む豊後灘
 「や、けり、かな」は強い切れ字です。二つ使うのは止めましょう。
47 水仙の匂い香し灘の海 そらまめ
<添削> 海鳴りのしてゐる水仙匂ひゐて
 「灘の海」ではどこか分かりにくいと思います。
48 山茶花の散りて吾が庭赤く染め 竹 豪
<添削> 山茶花の散りばむ鐘の遠くより
 説明的なのでこのように詠んでみました。
49 そっと手を火鉢に当たり列車待つ 哲 朗
<添削> 汽車待つや一人で当たる大火鉢   
 調子がよくないのでこのように詠んでみました。
50 年頭の誓いはお屠蘇までのもの 千 柳
<添削> 年頭の誓いはお屠蘇までのもの
 「年頭」「屠蘇」は新年の季語で季重ねになります。
考えてみてください。